天に星 地に花

B5のノート

ドラマ『海の見える理髪店』が良かった

ひと月ほど前の話。
5月9日にNHKBSで放送された『海の見える理髪店』が秀逸でした。

予告を見て、これは好きなやつだ!見逃すまい!とアラームまで設定して待ち構えていたほど。

海辺の小さな理髪店に若者(藤原季節)が訪れた。老店主(柄本明)は嬉しそうに調髪に取り掛かり、問わず語りに自らの人生を話し始める。家業の床屋を10才から手伝い、初めての仕事は兵隊に行く常連客の丸刈り、順調だった店が傾き酒におぼれ、妻に暴力をふるって離婚されたこと……。そして店主は突然、「人を殺めたことがある」と告白をする。なぜ、若者はこの理髪店を訪れたのか? なぜ、老店主は自らの人生を語るのか?  ーNHK HPより

どこかで見たような田舎道を走るバスの中にたった一人ポツンと座る青年、というシーンから始まります。青年役の藤原季節さんを初めて知りましたが、瞳の印象的な役者さん。

紗のかかったような白っぽい映像がこの物語の世界を創り上げていて効果的だったし
主演の柄本明さんが人の善良な面と醜悪な面を見事に演じていて、引き込まれるように観入ってしまいました。

腕の良い理髪師を演じる柄本さんの道具を扱う仕草や手つき、手順など、無駄な動きが一切なく、流れるように美しい。職人技を鑑賞しているかのようでした。
なるほど、実際に藤原さんの髪を切りながら撮影されたそうです。
理髪師の仕事をきっと全集中して勉強されたんだろうなぁ
本当に見事でした。

ドラマは店主の昔語りで静かに進みます。

人目を避けるような場所に建つ「理髪店」。
その庭で風に揺れるブランコ。

鏡越しに対話する店主と青年。

もしかして、、という予感は確信へと変わります。

散髪を終えた時の店主の振る舞いに、心が震えました。

 

印象的で心に刺さった言葉があります。

鏡の中の相手とは握手が出来ない

親しい友達も仲間もいなかった店主。
せっかく得た仲間も失ってしまいます。

自分のことしか考えてなかった。相手のことなど見てなかった。見てるようで見ていなかった。ちゃんと相手を見ておらず、向き合ってこなかった。

鏡越しの関係。

鏡越しに会話はできる、相手もわかる。
でも、鏡ではなく実際に向き合うのとは当然だけど決定的に違う。

 

店主はまるで私かと思う。
私も自分のことばかり考えているから。自分優先で自分中心だから。
相手とちゃんと向き合ってこなかったから。

鏡越しではなく、ちゃんと相手を見よう。向き合おう。
気づいた時がそのタイミングだ。遅すぎることはない。
いくら年齢を重ねていたとしても。

 

目先のことや派手なことに惑わされず、本質を見ることができる
そんな人間になりたいと思いました。
そのために、魂を磨くために私はヨーガに出会い、聖典を学んでいるのかなと思ったりもして。

 

荻原浩さん著の原作があり、文庫化されてる!読んでみようと思います。
読んで、そしてもう一度ドラマが観たいな。

今のところ再放送の予定はないようですが、素晴らしいドラマだもの、きっと地上波での再放送があるはず。。

 

もう一度観たい。静かで激しいお話でした。

www.nhk.jp